ESGがいまの相場バブルに「とどめを刺す」理屈と、もう一つの懸念点

board-1193333_1920.jpg「ESGの潮流が今後ハイパーインフレを来す可能性がある。」ドイツ銀行のストラテジストがそう語ったそうです。ざっくりどういう論点かというと、原油価格とインフレ期待は歴史的に常に連動しており、70年代や80年代、中東での革命や戦争が原因で世界的に原油の供給不足がおこって価格が上昇したとき、連動してインフレ期待が高まった。逆に、シェール層からの石油や天然ガスの採掘が可能になったことをうけ、OPECが2014年、原油価格を犠牲にしてでもエネルギー市場での原油のシェアを守る決断をして以降、供給過多で原油価格は低迷し、連動してインフレ期待は低まった。そんな中、ESGで再生可能エネルギーへのシフトが加速するほど、少なくとも一定期間はエネルギー供給側と消費側による設備投資やCO2吸収量クレジットへの投資がかさみ、従来の安い原油は選択肢から消え、インフレ圧力がかかる、というわけです。

インフレになると、世界中の中央銀行は金利を上げざるをえず、今までの歴史的量的緩和で支えられた流動性相場は弾け、信用買いの巻き戻しも入り、日本の中低位株銘柄ですらパフォーマンスに大きな影響を受けるでしょう。

ただもう一つ心配なのは、この「ESG」というくくりに埋没している「企業統治」の議論です。「E(環境)」や「S(社会)」を意識して企業経営(G)をせよ、という文脈はわかるのですが、企業統治には他の重要な側面もあります。「株主に提供されたリスクマネーで社長は保身行為をするな」「大株主だからといって会社に利益相反取引を強いるな」「経営判断ミスで多額の減損計上したなら、適時開示IRではぐらかさず、正直な開示をせよ」などの、会社にまつわる全ステークホルダーへの善管注意義務の履行です。

ESGに端を発するマクロ経済の議論に傾聴しつつ、ミクロ(会社単位)の「G」の重要性に、改めて思いをはせるのでした。
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個人投資家の脅威を意識? ゴールドマンなど大手証券がミーム銘柄の空売り制限を強化

s米国で特に人気のミーム銘柄につき、米大手証券が空売り制限をかけている、とブルームバーグが報じています

損を被るのは投資家なのに、なぜ証券会社が制限をかけるのか?と不思議に思うかたもいらっしゃるかもしれませんが、これは証券会社のプライムブローカレッジというサービス部門において、機関投資家に信用買いの資金提供や信用売りの貸株提供を行い、サービス料を受け取るビジネスをしているからです。(これを補完するサービスとして、「セブンイレブンを空売りしてローソンを買って、裁定機会を狙いませんか?」みたいな営業をするヘッジファンド・セールスといわれるデスクも証券会社にはあります。)

日本でも大きく報じられた、今年3月の米投資会社アルケゴスの破綻をうけ、野村を含む複数の大手証券がプライムブローカレッジで巨額の損を出し、証券業界はすぐさま顧客に提供する信用のリスク管理の見直しに着手したのでした。

SNSで連帯する個人投資家の脅威が、ウォール街で大手証券の経営判断に大きな影響を与えていると言えます。

プロフィール

金武偉 / Will Kim

Author:金武偉 / Will Kim


マンティス・アクティビスト投資1号(株)代表

ミッション・キャピタル(株)代表

過去の略歴:
2000年 カリフォルニア大学ロサンゼルス校(UCLA)卒業

2001年 ゴールドマン・サックス証券入社

2003年 JPモルガン証券に転籍

2005年 ボストン大学ロースクール入学

2008年 ロースクール卒業。ニューヨーク州弁護士としてウォール街に本社を置くサリヴァン・アンド・クロムウェル法律事務所入所。米国の会社法・証券取引法を専門

2013年 ユニゾン・キャピタル入社

2014年~複数のフィンテック・AIベンチャー経営参画後、投資活動への専念を決意

2018年 インパクト投資に特化するミッション・キャピタル(株)設立。代表取締役就任

2020年 上場企業アクティビスト投資に特化するマンティス・アクティビスト投資1号(株)設立。代表取締役就任

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