東芝事件が暗い影を落とす2022年市場区分再編

analysis-680572_1920.jpg報道を賑わす東芝の21年6月10日付「調査報告書」騒動。その問題の本質と我々が学べる教訓2つについて、昨日ITmediaさんに寄稿しました。まるでドラマのようなこの事件は、後世、「21年東芝スキャンダル」として記憶されることになるかもしれません。

株主が外国人であろうと日本人であろうと、投資先の経営幹部によって、社内で名指しで「政府にコワモテ対応をお願いしよう」「しばらく政府に叩いてもらおう」などと言われていればぞっとするし、政府役人から繰り返し「隣で大火事のときに横でバーベキューして巻き込まれないように」などと言われれば、異常なストレスを感じるでしょう。

そして、今後気になるのが、本スキャンダルによる投資家全般の「心理」への影響です。本調査報告書が世に出る前の「過去」の視点と、出た後の「未来」の視点に分けて考えます。

まず過去の視点。2017年12月、投資家勢は東芝に6000億円を注入しました。もし彼らが、会社法上保証される自分の株主権につき、上記のコワモテ・BBQ対応をとられることを、当時の増資契約締結の前に知ったとしたら、それでもあの6000億を東芝は調達できていたでしょうか。

そして未来の視点。東証は、2022年4月4日に現在の四つの市場区分を、プライム市場・スタンダード市場・グロース市場の3つの新しい市場区分へと再編します。東芝調査報告書を見たグローバル投資家の目には、プライム市場はそのコンセプトどおりのグローバルな投資家との建設的な対話を中心に据えた企業向けの市場として映るのでしょうか?

21年3月の臨時株主総会で、東芝の調査報告書が決議されていなかったら、東芝はどうなっていたのか。東芝はこのまま来年プライム市場に移るのか。日本の株式市場の益々の進化を願うほど、ハレーションに満ちた憶測と想像が、尽きません。
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ESGがいまの相場バブルに「とどめを刺す」理屈と、もう一つの懸念点

board-1193333_1920.jpg「ESGの潮流が今後ハイパーインフレを来す可能性がある。」ドイツ銀行のストラテジストがそう語ったそうです。ざっくりどういう論点かというと、原油価格とインフレ期待は歴史的に常に連動しており、70年代や80年代、中東での革命や戦争が原因で世界的に原油の供給不足がおこって価格が上昇したとき、連動してインフレ期待が高まった。逆に、シェール層からの石油や天然ガスの採掘が可能になったことをうけ、OPECが2014年、原油価格を犠牲にしてでもエネルギー市場での原油のシェアを守る決断をして以降、供給過多で原油価格は低迷し、連動してインフレ期待は低まった。そんな中、ESGで再生可能エネルギーへのシフトが加速するほど、少なくとも一定期間はエネルギー供給側と消費側による設備投資やCO2吸収量クレジットへの投資がかさみ、従来の安い原油は選択肢から消え、インフレ圧力がかかる、というわけです。

インフレになると、世界中の中央銀行は金利を上げざるをえず、今までの歴史的量的緩和で支えられた流動性相場は弾け、信用買いの巻き戻しも入り、日本の中低位株銘柄ですらパフォーマンスに大きな影響を受けるでしょう。

ただもう一つ心配なのは、この「ESG」というくくりに埋没している「企業統治」の議論です。「E(環境)」や「S(社会)」を意識して企業経営(G)をせよ、という文脈はわかるのですが、企業統治には他の重要な側面もあります。「株主に提供されたリスクマネーで社長は保身行為をするな」「大株主だからといって会社に利益相反取引を強いるな」「経営判断ミスで多額の減損計上したなら、適時開示IRではぐらかさず、正直な開示をせよ」などの、会社にまつわる全ステークホルダーへの善管注意義務の履行です。

ESGに端を発するマクロ経済の議論に傾聴しつつ、ミクロ(会社単位)の「G」の重要性に、改めて思いをはせるのでした。

オーナー社長を過小評価するガバナンス論調

businessman-1477601_1920.jpg巷で見聞きするコーポレートガバナンス改革議論のほとんどが、「社外取締役」やら「独立性」を重視せよ、あるいは「女性取締役・執行役員」を増やせ、という論調に思えます。もちろん、会社経営の執行に絶大なる権力を持つ社長はじめ執行役の牽制は大切です。ネットで世界が繋がり、消費者意識もどんどん進化するグローバルESG時代、外部の多様な視点を会社経営のかじ取りに活かすのも絶対必要だとおもいます。

私が唯一疑問におもうのは、議論のフォーカスに「バランスがきちんと取れているのか」という点。

会社の事業に精通し、同時に大株主(時には筆頭株主)でもあるオーナー社長の考えや判断は、やはり相応に尊重されるべき重みがあると思うのです。特に、経済危機や競争環境変化などで、会社経営のかじ取りが大変なとき、その事業に精通しない外部の監督者は、一体どれだけ効果的な救世主になりえるのでしょうか。

独立性や外部の視点は大切。経営監督機関の多様性確保も大事。ただし、事業の裏表に精通し、寝ても覚めても自分の会社のことを考え、業績や株価が上がっても下がっても自分の懐事情に大きくインパクトを抱えるオーナー経営者のリスク計算と判断力を、過小評価してはいけない。自社株保有数も少ないサラリーマン社長では、株価を上げる動機がないのみならず、ときに会社は生き残れないとおもうのでした。

個人投資家の脅威を意識? ゴールドマンなど大手証券がミーム銘柄の空売り制限を強化

s米国で特に人気のミーム銘柄につき、米大手証券が空売り制限をかけている、とブルームバーグが報じています

損を被るのは投資家なのに、なぜ証券会社が制限をかけるのか?と不思議に思うかたもいらっしゃるかもしれませんが、これは証券会社のプライムブローカレッジというサービス部門において、機関投資家に信用買いの資金提供や信用売りの貸株提供を行い、サービス料を受け取るビジネスをしているからです。(これを補完するサービスとして、「セブンイレブンを空売りしてローソンを買って、裁定機会を狙いませんか?」みたいな営業をするヘッジファンド・セールスといわれるデスクも証券会社にはあります。)

日本でも大きく報じられた、今年3月の米投資会社アルケゴスの破綻をうけ、野村を含む複数の大手証券がプライムブローカレッジで巨額の損を出し、証券業界はすぐさま顧客に提供する信用のリスク管理の見直しに着手したのでした。

SNSで連帯する個人投資家の脅威が、ウォール街で大手証券の経営判断に大きな影響を与えていると言えます。

FVCの2021年6月24日定時株主総会にいってきます

microphone-704255_1920.jpg私の個人会社(マンティス・アクティビスト投資1号)がFVCの株主であることは公の事実ですが、その遥か前から私は個人名義でもFVCに投資しています。

「アクティビスト」とはいっても、私は本来の意味でのアクティビストを心がけており、他に優れた手段があるのに無用に経営側と敵対するのは、会社にとって、そして自分の投資ポジションにとっても、スマートな振舞いではないとおもっています。

私がなぜFVCに投資したのか、経営者についてどう評価しているのか、現状と将来についてどう分析しているのか、については追々ゆっくり述べさせていただくとして、まずは今月の定時総会に出向き、様子を読者のみなさんにご報告したいと思います。

弁護士の猛反対を無視し、社名に「アクティビスト」を名乗った理由

desk-3076954_1920.jpg個人会社だから好きにしてよいとはいえ、私は社名を「マンティス・アクティビスト投資1号株式会社」にしました。正直、弁護士には、「(アクティビストには)ハゲタカのイメージがある」と止められたのですが(笑)、私がこれにこだわりました。

理由はとてもシンプルで、株主は「物を言う」のが本来は当然だから、と思うからです。政治選挙の投票とちょっと似ていて、市民は投票を通じて政府に「声を届ける」のが本来は当たり前のはずです。会社の資本リスクを負っているのは経営者ではなく株主なので、対話や議決権行使を通じて物を言うのが普通であってほしい、という信念からでした。

そういえば、マネックスグループの松本社長も、「マネックス・アクティビスト・ファンド」の名前をつけるときに上記と似たような思考や葛藤があった、と聞いた覚えがあります。

企業の将来を度外視して株主還元を迫るハゲタカ行為ではなく、オーナーが経営側を適切に律することで投資価値保全を図るのが本来のアクティビスト。世間にアクティビスト投資家が個人・法人でどんどん現れ、「アクティビスト」という言葉が死語になれば本望です。

ミッション・キャピタルの活動内容

Logo MC high resプロフィールにも記載がある、ミッション・キャピタルの活動内容について、ここで簡単にご紹介しておこうとおもいます。

この会社はインパクト投資に特化した投資会社で、2018年に創業しました。2018年11月に米国遺伝子系バイオベンチャーであるジェノプランに投資し、現在も継続保有しています。2019年2月には自動運転ベンチャーのZMPにも投資しました。その後さらに1件非公開案件に投資し、本稿執筆時点(2021年6月5日)では、ジェノプランを残し全ての投資ポジションを売却しています。

インパクト投資は「定量的に測定可能な社会貢献」と「投資リターン」の両立を謳う欧米発祥の投資テーマで、日本では第一生命や新生銀行なども積極的に取り組んでいます。2011年頃に私がまだニューヨークに住んでいたころ、このインパクト投資の概念と出会い、「社会的弱者を助け、人々の健康を増進し、環境を改善しながらリターンがあがるならなんてすばらしい投資なんだ!」と想い続け、2018年になって、ついに私も取り組んだのでした。

地方創生しかり、社会貢献というとすぐに「良いことやってるんだから、投資リターンは二の次でいいや」と言い訳されがちな領域ではありますが、持続可能性を前提とする「投資」である以上、私はリスクに見合ったリターンが期待できることはとても大切だと思っています。

お陰様でミッション・キャピタルは、投下資本倍率2.5倍、内部収益率162%の成績を上げるインパクト投資会社として活動中です。

みなさん、はじめまして!

office-932926_1920.jpg読者のみなさん、こんにちは!そして、このブログを、少しでも見てくれたあなたとあなたの貴重な時間に、感謝いたします。人前に出ることを特に好まない私が、こうしてこのブログを開設した理由はただ一つ:個人投資家同士で連帯し、上場企業ガバナンスを改善をすることです。

いま、SNS等の情報技術の浸透をきっかけに、日本を含む世界中の資本市場で静かに地殻変動がおきています。例えば、米国GameStopやAMCの件。SNSで連帯した個人投資家が、ヘッジファンドを経営危機に追いやりました。また、今般の米石油大手エクソンモービルの株主総会では、持分比率0.02%の環境志向株主による株主提案(取締役選任議案)が、経営陣の異例ともいえる抵抗をはねのけ、見事可決しました。

単独では持分比率が微々たるものでも、少数投資家は連帯を通じて経営陣を牽制し、機関投資家とも競り勝てるようになったのです。保身に走る経営陣のまえに個人投資家が泣き寝入りを強いられる時代は、今や静かに終わり、代わりに正論が経営を変え、株価も塩漬けにならず市場経済の新陳代謝もよくなる新時代が幕を開けました。

プロフィールにあるとおり、私は帰国子女で、さまざまな職務経験をしたほうかもしれません。それでも、今では自分は生涯投資家で、これまでいろいろやってみたキャリアは、投資家という性分に気づくための大切な寄り道だったのだ、と思っています。

株式トレーダー、ニューヨーク州弁護士、投資ファンド業務、ベンチャー経営、ベンチャー投資、そして上場企業投資を通じて学んだこと、いま思うことを、ここで発信し、読者のみなさんと手をつないで、この歴史的節目を一緒に歩んでゆければ本望です。

どうかよろしくお願いいたします。

金武偉

プロフィール

金武偉 / Will Kim

Author:金武偉 / Will Kim


マンティス・アクティビスト投資1号(株)代表

ミッション・キャピタル(株)代表

過去の略歴:
2000年 カリフォルニア大学ロサンゼルス校(UCLA)卒業

2001年 ゴールドマン・サックス証券入社

2003年 JPモルガン証券に転籍

2005年 ボストン大学ロースクール入学

2008年 ロースクール卒業。ニューヨーク州弁護士としてウォール街に本社を置くサリヴァン・アンド・クロムウェル法律事務所入所。米国の会社法・証券取引法を専門

2013年 ユニゾン・キャピタル入社

2014年~複数のフィンテック・AIベンチャー経営参画後、投資活動への専念を決意

2018年 インパクト投資に特化するミッション・キャピタル(株)設立。代表取締役就任

2020年 上場企業アクティビスト投資に特化するマンティス・アクティビスト投資1号(株)設立。代表取締役就任

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